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しかしよくよく調べてみると、プロのクラシックトランペット奏者のマウスピースはBach 1Cでありながら、1C-22-24や1C-24-24、1-1/2C-25-24のようにスロートを22~26に拡張し、バックボアはシンフォニックな24に変更されています。またカップの深さもCを好む人がいる一方でBを好む人も多く、中にはCのリムにBのカップをネジで連結させたものを使用している人もいます。オーケストラの中で大きな音を出すためには大きな口径のマウスピースが必要とは言え、どうして「標準品」にこのような手を加える人の方が多いのでしょうか? |
※ こちらの対照表はあくまで大まかなものです。各社発表による相当品を参考に作成しました。各社でマウスピースの入り口からどれくらいの距離で計測しているかが異なるため、各社が公表しているマウスピースのリムサイズ計測値は直接比較する事ができません。リムエッジの形状等にも左右されます。 |
Born : January 11, 1879 in St. Louis Missouri Died : Septemberl 25, 1936 in Monahans Texas 1895年から1899年までシカゴ海兵隊バンドで演奏し、その後1900年から1904年まで同バンドのソロトランペット奏者となる。 1908年~1910年ピッツバーグ交響楽団首席奏者、1911年~1912年ミネソタ交響楽団首席奏者、1912年~1933年シカゴ交響楽団首席奏者を歴任。 1933年~1936年はシカゴ交響楽団の人事部長として働く。 Frank Holton Companyシカゴ支店の営業マンとしても勤務しており、多くの楽器を販売した。 ※ Gustav Friedrick Heim Born : May 8, 1879 in Schleusingen Thüringen Germany Died : October 30, 1933 in New York U.S.A. ドイツのテューリンゲン州生まれ。1904年にアメリカのセントルイスに移住。 1904年~1905年セントルイス交響楽団首席奏者、 1905年~1907年フィラデルフィア管弦楽団首席奏者を務め、その後ボストン交響楽団に移籍する。 1914年~1919年はボストン交響楽団で首席奏者を務める。 この時、1915年にヨーロッパから亡命してきたVincent Bachがボストン交響楽団に首席奏者として入団し、約1年間演奏を共にしている。 その後1921年~1923年ニューヨークフィルハーモニック協会首席奏者、1923年~1924年クリーブランド管弦楽団首席奏者、 1925年~1928年ニューヨークフィル首席奏者を歴任する。 |
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Standard Model Aida Model | |
6-C, 7-C, 8-C | |
2-1/2, 3, 6, 6-1/2, 7, 7C, 8, 9, 10 | |
3, 5A, 6, 6 1/2A, 7, 7C, 7A, 8, 8C, 9A, 10, 10C,10 1/2A, 10 3/4A, 11A, 11 1/2A, 12 | |
6, 6B, 6C, 7, 7B, 7C, 7BW, 7CW, 8, 8B, 8C, 8-1/2, 8-1/2B, 10-1/2C, 10-1/2CW 11B, 11C, 11DW, 11EW 12C, 12CW 17C1, 17C2 | |
Same as 1938 |
黎明期の頃から、Bachは顧客のカスタムオーダーに対応していました。顧客の要望を聞くうちに、オーダーの多い大きさや形状がある程度見えるようになっていったと考えられます。ある時彼はカップの直径ごとにこれらのモデルを再整理し、数字を割り当てることにしたのです。またカップの深さについても使用目的によってアルファベットを割り当てることにしました。 これらの割り当ては1920年代当初から大きく変更されていないため、リムサイズと型番の等間隔的な法則性は現在においても統一されていません。例えばリム形状が異なる同一の内径に異なる番号がつけられたり、使われていない番号・1/2や1/4等の付け足された番号があったり、隣り合う番号に対する内径の数値の変化が不規則だったりするのです。また同じCカップでも3Cはカップ深さが浅いのに2-3/4Cは極端に深かったり、Wリムとそうでないもので深さが著しく異なったり、同じリム番号でもカップ深さによって内径が異なったり、リム番号によっては用意されていないカップが存在したりするのです。 一方でマウスピース全体のバランスはかなり調整されていると言ってよいでしょう。リム形状、リム内径、カップ形状、カップ容量、スロート径、バックボア形状等、1つのマウスピースにおける変数は非常に多いのです。「完成された」マウスピースを適当に改造し、これらの変数要因の1つを変更すると、マウスピース全体の特性バランスが変わってしまい、そのマウスピースを使用した演奏方法に劇的な変化が生じてしまいます。またマウスピース全体の長さや、楽器に挿入した時のマウスピース先端とリードパイプ先端の隙間の量によって、同じ楽器でも演奏のしやすさが大きく異なることに彼は気付いていました。数年間の試行錯誤の経験で、Bachはそれぞれのマウスピースを最適と思われる形に仕上げていたのです。 数値的に均一な間隔の法則性はないものの、カップサイズやリムサイズに理論的に番号や記号をつけた「マウスピースのシリーズ化」は、多くの顧客に対しマウスピース選びを明快なものにしました。それまでのマウスピースはアーティストの名前で販売されるのが一般的で、リム口径やカップサイズは全く統一性のない物でした。数値が大きくなればリム内径が小さくなる・アルファベットが前になればカップは深くなる、という明快な考えは、現在のBachマウスピースに対する多くの人の認識であり、概ねそのイメージでマウスピース選びをしても大きな間違いをすることはないのです。 |
ここで着目したいのは、6・7・8はリム口径が同一であり、リム形状が異なるという点です。 6はオーケストラ奏者用、7と8は軽音楽奏者用のリム形状をしているのです。 Bachはダンスバンドやサーカスでの演奏経験と、北米オーケストラでの現場経験から、 口径やカップ深さに変化をつけるのではなく、カップ口径と深さが適切であればジャンルを問わず演奏できると考えていました。 そして、唇と接触するリムの形状こそが最も大切で、どのような発音がしやすいかのか・高い音が出やすいか、などの要素を決定していると考えたのです。 6のリムは癖のない音の入りで、輪郭が美しくはっきりとした音作りが可能です。 一方で7と8は様々な発音や表現ができて、口径を最大限に使う事ができます。 1920年代や30年代は、オーケストラよりも軽音楽の方がより多彩な吹き方を要求された時代だったのです。 現在Cカップは「中庸」というイメージが定着していますが、作られた当初は明るくかなりはっきりした音を想定されて開発されていたのです。 20世紀前半の北米のオーケストラのトランペットは、柔らかく丸いコルネットの音とは差別化された、明るい音色が求められていました。 マウスピースの深さが持つ現在のイメージとは大きくかけ離れていることが分かります。 11のリムは、19世紀のフランスの楽器の為に作られたリムです。 19世紀フランスの作曲家は、トランペット2本・コルネット2本、計4人の奏者を必要とする曲を書きました。 ドリーブのバレエ『シルヴィア』『コッペリア』等が代表的な例です。 これらの楽曲を演奏する際に、昔のフランスで使われていた楽器に合うことをコンセプトに、11のリムは作られました。 小ぶりな口径で歯切れの良い音が鳴り、Aカップはコルネット、Cカップは小型のC管での演奏が想定されています。 19世紀のフランスではアーバンやフランカン等の名手が生まれ、それぞれの流派を確立していきました。 現在このリムに合う楽器が生産されておらず、マウスピースとの相性が最適な楽器を求めるならば、 1960年代以前に製造されたCourtois、Selmer、Couesnon等の楽器を探さなければなりません。 同様に12のリムは、ニニロッソに代表されるイタリアでの奏法の流派で演奏する人に好まれたリムです。 当時のイタリアではKINGやSelmerのB管を使用していました。 現在の楽器ではBengeやMボア38ベルのBachと相性が良く、一部の北米西海岸の奏者に好まれています。 11・12のリムは1950年代までは定番のリムナンバーでしたが、その後廃れて行ってしまい、現在Bachの11や12のリムを使用する奏者はかなりの少数派となっています。 フランスやイタリアの奏者の奏法は、北米のクラシックや軽音楽のものと明らかに異なっており、 1970年代までは明確にジャンル分けされていましたが、その後時代と共に消えていきました。 Born : February 28, 1825 in Lyon France Died : April 8, 1889 in Paris France フランスのコルネット奏者、教師、作曲家。教則本アーバン著者。 1841年から1845年までパリ音楽院でコルネットを学び、 1857年にパリのエコール・ミリテールでサクソルンの教師となる。 1864年に世界的に有名な教則本『アーバンによるピストン式コルネットとサクソルンによる完全な大奏法』を出版。 1869年にパリ音楽院のコルネット ・ア・ピストンの教授となる。 ベルリオーズの幻想交響曲第2楽章のA管コルネット独奏は、アーバンのために後に書き加えられたものである。 ※ Merri Jean Baptiste Franquin Born : October 19, 1848 in Lançon Bouches-du-Rhône France Died : January 22, 1934 in Paris France フランスのトランペット奏者。23歳でパリ国立音楽院に入学し、Arbanのクラスに在籍。 在学中に長管F管トランペットをC管トランペットに置き換える。 これにより、1870年代頃よりフランスではC管トランペットが広まっていった。 1894年から1925年までパリ国立音楽院のトランペット教師。 弟子にGeorges Mager (1919年から1950年までボストン交響楽団の首席トランペット奏者。1940年代にBachに依頼し、B管のような音が鳴る大型のC管を製作させる。Adolph Hersethの師。) やEugène Foveau(1925年から1947年までパリ国立音楽院のコルネットの教師。Pierre Thibaudの師。)がいる。 Raffaele Celeste 'Nini' Rosso Born : September 19, 1926 in Torino Italy Died : October 5, 1994 in Rome Italy 20世紀イタリアで最も良く知られたジャズトランペット奏者。 1960年代に多くのレコードをリリース。「夜空のトランペット (Il silenzio)」は100万枚以上の売り上げを記録する。 Born:October 30, 1930 in Wilmington, Delaware, U.S. Died:June 26, 1956 in Bedford, Pennsylvania, U.S. アメリカのジャズトランペット奏者。25歳の時に自動車事故で亡くなる。 |
A : Cornet用、C : C管トランペット用 | |
(B管と、小型のC管・D管用) | |
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オーケストラでBカップを使う事が広まっていくにしたがって、Bachは管の長さとカップ容積を再考し、以下のようにカタログに表記し始めました。 |
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これらから、リム形状を重視していたBachに対し、顧客はリム口径やカップの深さでマウスピースを選択する流れができた、という事ができます。 1938年のBachマウスピースのカタログでは管の長さによってカップ容積が分けられていましたが、 次第に様々な口径・深さに色々なジャンルを想定したリム形状が混在しはじめました。 |
Born : January 1, 1896 in Ukraine Died : Desember 18, 1982 in Bay Harbor, Florida U.S.A. 5歳の時にアメリカに移住する。幼少よりヴァイオリンとチェロを始めるが、トランペットに転向した。 Max Schlossberg、Christian Rodenkirchen、Gustav Heimら名だたる奏者からトランペットを師事。 1915年に19歳でフィラデルフィア管弦楽団首席奏者となり、1917年まで演奏をする。 その後、1919~22年ニューヨーク交響楽団首席奏者、1922年~1923年サンフランシスコ交響楽団首席奏者、 1923年~28ニューヨークフィルハーモニック協会首席奏者、1928年~1942年ニューヨークフィル首席奏者、 1942年~1954年にはトスカニーニの指揮するNBC交響楽団首席奏者を歴任する。 晩年はマイアミ大学で教鞭を執り、 弟子にフィラデルフィア交響楽団で1975年から1995年まで首席奏者を務めたFrank John Kaderabekがいる。 |
Born : July 25, 1921 in Lake Park, Minesota U.S.A. Died : April 13, 2013 in Oak Park, Illinois U.S.A. 1948年から2001年まで、53年間シカゴ交響楽団の首席トランペット奏者に君臨する。 ルーサー大学で数学の学位を取得した後、 第二次世界大戦中に米海軍で音楽家として従軍。戦後ニューイングランド音楽院で ボストン交響楽団のトランペット奏者であるMarcel LaFosseとGeorges Magerに師事。 この二人はフランス系アメリカ人であり、C管トランペットを使用していたため、彼もその影響を受けてC管トランペットを使い始める。 1948年、27歳の時にシカゴ交響楽団の首席トランペット奏者に就任。 彼ががボストンからシカゴへ発つ直前、Vincent BachからC管(229ベル・7パイプ・Lボア・B管用のスライド付)を託される。 以後53年間、80歳まで首席トランペット奏者を務めた。 |
6番以上の標準品に関しては、常に完璧なデザインを求めて形状の微調整が何十年も行われていました。 一方で大きなサイズのマウスピースに関しては特注対応でしか作らなかったので、オーダーした顧客の要望によって様々な形状が存在していました。 クラシック奏者の間で需要のあった5番に関しては、1920年代の5Aや特注の5Bを元に再調整され、5A・5B・5Cの3つの深さのカップが標準品に採用されています。 しかし1~3に関しては、統一性の無い特注品番をサンプルに短期間のうちに最終形状が確定されました。 現在の1~3の標準品は「ある個体」のコピー、ある形状の拡大版、または複数の個体を参考に作られたものなのです。 これは2Cのカップ形状と3Cのカップ形状がまるで異なることからもわかります。 また他のメーカーで「Mt.Vernon時代のBachを参考に」「20世紀中盤ににヨーロッパに輸入されたBachを参考に」と紹介されているマウスピースに関しては、 1-1/2C等の品番はその時に手元にあった「ある個体」を参考に作られた、と解釈すべきです。 これらの大きなサイズのマウスピースの標準品デザインを確定させる際、6以上のサイズのようにリム形状やカップ形状、 バックボアなどのつきつめた開発がされたわけではありません。 小さなサイズのマウスピースは、リム形状・カップ形状・内径・バックボア等、何十年もの試行錯誤と微調整を経て最終形状に至っています。 一方で大きなサイズのマウスピースは、長期間に渡る形状の吟味はされていないのです。 ボストンやニューヨークでは大きなリムが好まれる時代へと変化しつつありましたが、 大きなリムサイズのマウスピースのニーズは1960年代はまだそれほど多くなかったので、 大きなマウスピースの形状を短期間で決めてしまうことを、さほど大きな問題と捉える必要もないと判断されてしまったのかもしれません。 1961年の時点でアメリカのオーケストラ奏者達は、B管に5~8のリムの組み合わせを好んで使用している人が多数派だったようです。 大型のリム口径に関しては、1系・2系・3系が存在し、4番はありません。 3つの口径はそれぞれカップ形状が異なります。 1系は標準的なカップでCカップに派生品番が存在し、3系はやや浅めで派生品番はありません。 1と3には各深さのカップが準備されていますが、2にはありません。 2系は独特なUカップでCと無印しかなく、Cカップにのみ派生品番が存在します。 そしてこれらのマウスピースには、いくつかのマウスピース間で同一リム形状が存在します。 リム形状に着目することで、あるマウスピースを元にカップ形状を変更したり、リム口径を変更したりした、と考えることができます。 1C 1CW 3C 1Cと3Cはリム形状が同じです。しかし1Cは6Cや7Cと同じく中庸な深さのカップに対し、3Cはかなり浅いカップが採用されています。 1CWは1Cとカップ形状はほぼ同じですが、リム口径は僅かに1CWの方が大きくなっています。 3D 3E 3F これらは同一リム形状で、深さのみが異なります。 これらのカップ形状は3Cを更に浅くした皿状で、7EWや10-1/2EWのようにある程度深さのあるUカップではありません。 3Dは皿状のカップで、10-1/2Eのカップ形状とよく似ています(10-1/2Eと10-1/2EWのカップ形状は大きく異なります)。 3Eは10-3/4EW(旧品番17C2)のカップ形状によく似ています。 3Fは3Eよりも更に浅くなります。 3D~3Fはクラシック奏者向きというよりは、ある程度大きなリムでハイノートを鳴らす必要がある人に需要がある形状です。 1B 3B この2つはリム形状が異なりますが、6Bや7Bと同じくやや深いカップが採用されています。 クラシック奏者向きのマウスピースと言えるでしょう。 1B 1D 1E これらは同一リム形状で、深さのみが異なります。 1Dは皿状で3Dとカップ形状が似ており、1Eと3Eも同様にカップ形状がよく似ています。 ただし1系の方がリム口径が大きいため、カップ深さもやや深くなっています。 1B・1Cはクラシック奏者向きと言えますが、1D・1Eはハイノートを演奏する人向けと言えそうです。 1-1/4C 1-1/2C これらは同一リム形状で、リム口径のみが異なります。 同じ中庸なCカップですが1Cに比べ1-1/4C、1-1/2Cに比べわずかに浅い作りになっています。 1-1/2B 1-1/2Bは1Bと同じくやや深いカップが採用されています。 しかし両マウスピースのリム形状は異なります。 1-1/4C、1-1/2C、1-1/2Bの3つはクラシック奏者に好まれる形状のマウスピースと言えます。 1 1X 1XはMt.Vernon時代の1です。なぜこのような事になったのかは後述します。 1の方がリム口径が大きく、両者とも深いUカップです。 1 2 3 これらのマウスピースは深いUカップを特徴としています。 しかしカップ形状は3つとも異なります。 2のカップは最も深く、リムからカップの始まりにかけてほぼ垂直に削られています。 1は3つの中で最も浅く、非常に大きな口径とカップを持つマウスピースで有名です。。 リム形状はどれも異なる形をしており、2は非常に平らな形状をしています。 2 2C 2-1/2C 2-3/4C 2系のマウスピースはどれも独特なカップ形状をしています。 通常のCカップを茶碗型とすると、2系はリムからカップの始まりにかけてほぼ垂直に削られているためボウル・半球型に近いと言えます。 特に2-3/4Cはほぼ半球といっていいでしょう。 深さは2Cと6Cはほぼ同じくらいです。 そして2C、2-1/2C、2-3/4C、2の順でカップが深くなります。 またリム形状は2Cと2-1/2Cはよく似ていますが、4つとも異なります。 3CW 3Cと3CWは全く異なるマウスピースです。 浅めの3Cに対し、3CWは漏斗状で3Bとカップ深さがほぼ同じです。 実質3Bのワイドリムと考えるべきでしょう。 リム口径は1-1/2Cに近く、3系にしては大きなリムが特徴です。 5A、5B、5C 5Cは大きな口径を持つリムで、3C、1-1/2Cに近い大きさです。 またカップ形状も1-1/2Cに似ています。 5Bは6Bや7Bとほぼ同じカップ形状、5Aは3や7とほぼ同じ漏斗型のカップ形状で、 5C、5B、5Aの順に深くなります。 リム形状は3つとも異なりますが、5Aと5Bのリム形状はよく似ています。 |
1 | ○ X |
○ | ○ CW |
○ | ○ | |
1.25 | ○ | |||||
1.5 | ○ | ○ | ||||
2 | ○ | ○ | ||||
2.5 | ○ | |||||
2.75 | ○ | |||||
3 | ○ CW |
○ | ○ | ○ | ○ F | |
5 | ○ | ○ | ○ |
日本でも1980年代~1990年代に大きなマウスピースを好む流れができたため、現在でも多くの人が1~3のリムを使用しています。 1C・1-1/4C・1-1/2Cなどはクラシックのプロ奏者の定番マウスピースとなっています。 一方で、多くのアマチュア奏者の場合1・1X・1B・1Cなどは大きすぎる・演奏しづらいと感じます。 これらの大きなマウスピースは相当唇を鍛えている奏者でないと、オーケストラで使いこなすのは難しいのです。 大きなリムを好むアマチュア奏者は、一回り小さい1-1/4Cや1-1/2Bを選択することが多くなりました。 そして、マウスピース口径の大型化に伴って、スロート径拡大やバックボアの24への変更はプロ・アマ問わず有名な追加工改造となったのです。 この流れの中で、5~8程度の大きさのマウスピースを使うプロ・アマチュアオーケストラ奏者はかなり少数派となり、 1-1/2のサイズが大きいと感じる奏者も2Cか3B程度のマウスピースを使用するようになりました。 この事実から、2つのことが推測できます。 1つ目は、多くのアマチュア奏者は窮屈なことに気付かず27スロートを使用している可能性があるという点です。 2つ目は、27スロートによる奏法が一般的となり、20世紀前半~半ばと事情が変わってきている可能性があるという点です。 もし仮に1つ目の推測が多くの奏者に当てはまるならば、スロート拡張・又はシンフォニックモデルのマウスピースを試して見るべきでしょう。 一般的に、スロートを拡張するとより多くの息を楽器に送り込むことができます。 そうすることによって、「きつい音色」に変わってしまう音量の限界点が上がります。 厚く芯のあるシンフォニックな音を、より大きな音で演奏できるようになるという訳です。 しかし、自分の奏法に合わない程にスロートが大きすぎると、倍音が欠けて音に焦点や芯がなくなってしまいます。 また体力の消耗が早まり、音域もせまくなってしまいます。 道具の変化は、奏者に「より吹きやすい」「より音が良い」という二つの感覚をもたらします。 スロートを段階ずつ拡張した場合、最初のうちは両方のメリットを得られるでしょう。 しかしあるところから2つの感覚は互いにトレードオフに変わります。 この時、そこで辞めるのか、どの段階まで吹きやすさを犠牲にして音の良さを求めるか、という問題に対し、自分なりの答えを見つけなければいけません。 一方1960年代~70年代、既に大口径のマウスピースが27スロート・10バックボアや7バックボアと相性が良くない事に気付いていた会社もありました。 SchilkeやGiardinelliでは拡張スロートと共に、太いバックボア形状について研究されていたのです。 しかしこの2社はシンフォニックな音を求める奏者が好むメーカーでは無かった為、クラシック奏者からはあまり注目されませんでした。 1~3のリムについては、ベストなスロートとバックボアの答えは出ていません。 多くのクラシック奏者はスロートを26~22に拡張し、24バックボアを選択しています。 2018年にBachからシンフォニックモデルと称し、1C・1-1/4C・1-1/2Cのリムに26~22のスロート、24バックボアのマウスピースが標準品として発売されています。 このシンフォニックモデルは後に2Cや3Cにも追加されました。 「太いバックボアは豊かな音が出る」と言われますが、音量にも影響します。 24バックボアは10バックボアや7バックボアよりも容積が大きい分、大きな音が出しやすいのです。 特注対応にはなりますが、5Cや6Cを26スロート( 3.71mm )に1段階のみ拡張し、24バックボアにするという組み合わせも、悪くない選択肢と言えそうです。 また現在MonetteやBreslmairから発売されているマウスピースは、Bachの24バックボアよりもはるかに太く広がりの早い形状となっています。 |
6BM 6BMは6Bのマウスピースに26スロート、24バックボアの組み合わせの標準品です。 元祖シンフォニックモデルと言っていいでしょう。 オーケストラ奏者だけでなく、チェット・ベイカーも愛用していた品番です。 皿型と洗面器型 DやEの浅いマウスピースのカップには、大まかに分けて皿型と洗面器型のカップが存在します。 皿型は全体的に浅く、B管トランペットを使って軽音楽でハイノートを演奏することを想定したカップです。 一方洗面器型はリムのすぐ内側で急に深くなり、底のあたりはなだらかなカップ形状です。 皿型に比べてそれなりに深さがあり、クラシックで短管を演奏することを想定したカップです。 10-3/4CW 10-3/4EW これらはNew York時代の17C1・17C2にあたります。 10-3/4系はこのワイドリムの2品番しかありません。 どちらも軽音楽でハイノートを鳴らす前提で設計されています。 短管用マウスピース ピッコロトランペットの定番マウスピースとして7EWは有名です。 7D・7DW・7E・7EW・10-1/2D・10-1/2DW・10-1/2EW・11D・11DWはカップ形状がほとんど変わりません。 これらはリム口径の大小と、ワイドリムかそうでないかの違いになります。 10-1/2E 10-1/2EWと10-1/2Eはカップ形状が大きく異なります。 10-1/2EWは洗面器型で短管用のカップ形状なのに対し、10-1/2Eは浅い楕円形です。 深さは3Eと同程度で、ハイノートが鳴らしやすいカップです。 またこのマウスピースは7Cに近いリム形状をしています。 11EW 11EWは浅いラグビーボール型のカップのマウスピースです。10-1/2Eよりは深い形状をしています。 他の11系マウスピースである11A・11B・11C・11D・11DWは7系をそのまま小さくしたような形状で、 特に11D・11DWは7D・7DWと同じく短管用のカップ形状をしています。 しかし11Eという品番はなく11EWのみが存在し、そのカップ形状は楕円型です。 12CW 12CWは皿型のカップ形状としては最小リムのマウスピースです。 10-3/4EWよりやや浅く、かなり小さいリム口径のマウスピースです。 他の12系マウスピースである12・12B・12Cは7系をそのまま小さくしたような形状です。 B管 現在のMLボア・37ベル・25パイプが主流になりはじめたのは1945年以降のことです。 特にMt.Vernonに工場が移転した1953年以降、最もスタンダードな組み合わせとなりました。 その後、1956年にチューニングクルークの幅が広くなり、 1964年12月にチューニング管の抜きしろが1インチから1/2インチに改められた180が誕生しました。 この時代のオーケストラ奏者は、大きなスロート共に5~8リムのマウスピースを使用する者が多かったはずです。 このようなマウスピースに合わせて180ML37/25の組み合わせが選択されていたのが1950年代~1960年代という訳です。 多くの奏者が1~3の大きなリムのマウスピースでMLボア・37ベル・25パイプを吹く事は、Bach本人も想定外だったと考えることができるのです。 マウスピースの口径を大きくすると、楽器もより大きなボア・太いベルの方が相性がよくなります。 より大きなボアを求めてLボア43ベルの組み合わせや、65ベルのような太いベルという選択もありますが、 もしBachが1990年代まで現役で開発を行っていた場合、大きなボアを持つ全く新しいB管が作られた可能性があります。 現在多くの奏者が1~3のマウスピースでMLボア・37ベル・25パイプのB管を吹いていますが、これが最適なのかどうかはわかりません。 C管 Bachが1924年~1961年の間に製作したC管は523本で、1941年までに73本、1945年以降に450本という内訳です。 第二次世界大戦で止まっていたC管の開発は、1945年以降に加速しました。 1953年にLボア・229ベル・25パイプのC管が生産されはじめ、1955年にシカゴ交響楽団に4本納入されています。 1956年にはチューニングクルークの幅がそれまでよりも広い設計に改められ、239ベル・25パイプの楽器が登場します。 1956年から1961年にかけて、239ベル・25パイプのC管はLボア63本、MLボア91本が生産されています。 また238ベルのC管については、Lボア13本、MLボア37本が生産されています。 これらのことから、BachがSelmerに会社を売却した時点では、C管のボアのニーズがMLボアからLボアへ移行しつつもMLボアの方がまだ需要があったと考えることができます。 大きなマウスピースで自由に楽器をコントロールするには、楽器もより大きなボア・太いベルの方が理想的と言えます。 BachのC管は、オーケストラでの使用に耐えるため、「B管のように」「ドイツのロータリートランペットのように」、太く豊かで大きな音を追い求めたため、 大きなボアと太いベルを持っています。 その点でLボア・239ベル・25パイプという組み合わせは、大きな口径のマウスピースと理想的なマッチングと言えるかもしれません。 しかしこの組み合わせでチャイコフスキーの交響曲を吹ききれる体力のある奏者は、ほんの一握りと言っていいでしょう。 体力消耗の点で、多くの人にとって理想的な組み合わせとは言い切れません。 逆に小さな口径のマウスピースを使う場合、Mボア・7パイプ・236ベルなどの組み合わせが考えられます。 しかし音質の点で前者にはかないません。 DカップとD管 BachのDカップやEカップは、本来SMボア・304ベルや311ベルを採用した20世紀前半の小型のD管トランペットの為に開発されたマウスピースでした。 後継機のM236/7Dも室内楽や編成の小さな古典的交響曲での使用が想定されていました。 これらの楽器には7DWのマウスピースを用い、コンパクトな音量で演奏する事をBachは考えていました。 Bach本人はD管がオーケストラの現場で主力機として使われる事は想定していなかった為、大きくて豊かな音は求めていなかったのです。 しかし1968年になるとSchilkeからMボアを採用したD/Es管E3LやE3L4が発売され、soloやオーケストラの現場でD/Es管で大きな音を出すようになりました。 これらの楽器に7DWを用いると音が明るすぎてオーケストラの中で浮いてしまいます。 またBカップやCカップで大きな音を出そうとすると、音程やコントロール面でベストな選択とは言えません。 Bach引退後Selmerの技術者が開発した、MLボア・239ベルの189、Lボアを採用した189XLも登場し、D/Es管のボアの大型化が進みました。 これらの楽器は20世紀前半のD管とはかけ離れています。 Eカップとピッコロトランペット ピッコロトランペットを7EWで吹くのはどうなのでしょうか? 現在の7E・7EWのカップ形状は、New York時代の7Eとほぼ変わっていません。 Bachは1925年の段階でSボアのB管ピッコロトランペットを作っていました。 しかし35年以上の月日が経ち、Bachが引退したころ、ピッコロトランペットにも大きな変化が始まろうとしていました。 フランスのSelmerはMaurice Andréと共に近代的なピッコロトランペット開発の先駆者となりました。 Selmerは1959年に3本ピストンのピッコロトランペットの360Cを製作しました。 翌年には4本ピストンのピッコロトランペットも製作され、1967年にはMaurice Andréが監修した4バルブピッコロトランペットである360Bが完成します。 Andréはこの楽器に7DWのマウスピースを使用していたそうです。 一方1966年9月、アメリカのSchilkeが3ピストンのピッコロトランペットを開発します。 ここから何度も改良を重ねたSchilkeは、1971年に4本ピストンのピッコロトランペットP5-4を発表しました。 このSchilkeのP5-4は大き目の0.450インチのボアを備えていたため、それまでの0.415インチが主流だったフランスのピッコロトランペットと一線を画しました。 またロングコルネット用の短い長さのマウスピースを使い、楽器とのバランスを取ったのです。 演奏の容易さ・音程・音色・コントロールの点からP5-4はSelmerを押しのけ、ピッコロトランペットの代名詞となったのです。 現在のピッコロトランペットはSchilke P5-4を手本に開発されているものが殆どです。 そしてこれら楽器を演奏する時、Bach 7EWやSchilke 11AXなどのマウスピースが用いられていることが多いです。 しかしボアサイズ・ベル直径や太さの点から、現代のピッコロトランペットは1950年代~1960年代のピッコロトランペットより大きく進化していると言えるでしょう。 一時期スロートを25程度まで拡張するという追加工が流行りましたが、標準品のマウスピースのままの方が良いかどうかは個人の感覚の問題も大きいのかもしれません。 またBachの117バックボアとSchilkeのXバックボアは、共に非常に太いバックボアですが、楽器から出てくる音色は大きく異なります。 |
バックボア計測データの比較 |
![]() ![]() ![]() A:24、B:7、C・無印:10、D:76、E:117 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
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