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このようにヴィオラのサイズが現代においても確定されないのには、歴史的な事情もあります。Antonio Stradivariの制作したヴァイオリンは、1700年代初頭までに355mmの大きさに落ち着きました(例外もある)。Stradivariは楽器を製作しながら、355mmより小さなヴァイオリンは音量が無く、355mmを超えてしまうと音色がアルトトーンに偏ってしまい、ヴァイオリンらしさが損なわれる事に気付いたのです。一方Stradivari制作のヴィオラ(8挺のみ現存)は、残された木型から470mm前後のテノールヴィオラと、410mm前後のコントラルトヴィオラの2種類を製作されていたことがわかっています。更に同時期に製作された他の職人の作品では、430mmを超える物もあれば380mm程度のヴィオラも存在します。大きさがまちまちなのは、20世紀初頭のヴィオラでも変わっていません。つまり、ベストな大きさを一つに決めるといった事が歴史上されなかったのです。そして、大きいから深い音が鳴る・小さいから演奏が容易である、と言ったそれぞれの大きさの利点が一番に着目されてきたことが推測されます。 |
自分は現在41.6cmの楽器を使用しておりますが、過去に39.5cm、40.5cmの楽器を所有していた事もありました。20歳を超えて初心者から弦楽器をはじめ、少しずつ上達する中で、その時々で感じた事などを紹介します。 ドイツ量産品 2004年製作 20歳頃に初心者で買った楽器で、価格も一般的な初心者・初級者向けでした。当初大学オケでトランペットを吹く傍ら、個人レッスンに通って基礎練習と曲を見てもらっていました。しかし2年3年練習するにつれて、「重たい」「音が固い」という不満点が見えてきました。ヴィオラを始めて4年目に初めてオーケストラに出る事になり、合奏のtuttiで弾くとやはり音が固い・・・個人レッスン当初は安価第一の弦を張っていましたが、音色への不満から次第に様々な弦を試すようになりました。 ハンガリー工房製 2010年製作 初代を下取りして購入。堅い音の鳴る楽器から脱却したかったというのが買い替えの理由です。39.5cmという小ささからか、音はバイオリン寄りでしたが、オケのヴィオラセクションでよく馴染みました。2代目を購入する際、同じ工房製作のもので42.0cmのものと39.5cmのものがあったので、「きっと42.0cmの方が良いだろう」と弾き比べてみた所、39.5cmの方が遥かに良い楽器でした。42.0cmのものは音が固く、大きすぎて弾きにくい楽器でした。先入観を持つよりまず試奏すべきですね。 ポーランド工房製 2011年製作 もともと新しい楽器を買う予定など全くありませんでした。所属している楽団の人がヴァイオリン講師として働いている音楽教室の楽器店で、弦楽器展示会を行うと聞き、興味本位で行ってみた所たまたま見つけました。展示会ではたくさんのヴァイオリンと共に、ヴィオラはテーブル1つに4挺だけ。価格も4者4様でした。一番高いヴィオラはサイズが41.6cmと書いてあり、お値段も高かったので自分には縁のない物だなあと感じましたが、「来たからには弾いてみるか」と思い、安いものから順に試奏してみました。3つ目までは「ふーん」という感想しか持たなかったのですが、4つ目を弾いてみて衝撃!持ってみて軽い。左手の指を開かなくても弾きやすい(39.5cmとそう変わらない)。音が豊穣で重厚で、好みの音色。暫く弾いて、値札を見返してその日は帰ったものの、楽器の事が気になって仕方ありません。これは、行動しなければ後悔すると思い、後日展示会のあった店に電話して、九州の展示会へ行ってしまっていた楽器をもう一度送り返してもらいました。売れてなくて良かった・・・そのまま2代目を下取りにして購入。 |
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![]() ![]() ![]() Tartis程ではないがロウアーバウツも大きい |
左手の持ちやすさですが、大きなヴィオラであってもネックの太さが工夫されていたり、弦長(ナットから駒までの、演奏の際に振動する部分の長さ)が工夫されていたりする事で、演奏する時の感覚はそれ程大きく感じません。作りの良い物についてですが、これは製作者サイドの見識になりますので、我々奏者が見分ける事は難しいと思います。よく「軽い楽器が良い」と言われますが、確かに軽い方が箱の内部の共鳴において有利です。しかし、楽器の板厚が薄すぎると駒にかかる弦の力に耐えられなくなり、数年で不健康な楽器の状態に陥る事も事実だ、とある製作者の方が言われていました。そして作りが良いという事の一つに、板厚は薄い(最低限の強度の厚みはある)が、表板が駒から受ける弦の力を上手く分散させる形状になっているか、という点を言及されていました。また、表板にねじりの力がかかった状態で組み上げられてない事も重要だそうです。この他にも製作する上で様々な要因があるのでしょうが、軽くても作りが良くなければ良い楽器とは言えないのは確かなようです。 |
![]() ![]() ![]() ヴァイオリン:全長594mm ボディサイズ355mm、弦長324mm ヴィオラ:全長685mm ボディサイズ416mm、弦長370mm |
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