Größe der Bratsche
 
 ヴィオラ奏者の間では、自分の使用している楽器のサイズがしばしば話題になります。市販されているメーカーの量産楽器では、ヴァイオリンはボディサイズが大体355mm前後と決まっているのに対し、ヴィオラの場合は39.4cm~40.6cmと差があります。また、時々38cmや42cmのようなサイズのものも売られている事があります。







 大きなヴィオラは「音が良い」と言われます。大きなものを良しとし、41cmを超える大きなヴィオラを愛好している方が、プロアマ問わずたくさんいらっしゃるのは事実でしょう。しかしプロの中でも39.5cm前後のものを使用している方も多いです。また、普段ヴァイオリンをメインに活動している方で、たまにしかヴィオラを弾かない方は、持ち替えのし易さから小さなヴィオラを好む方が一定数おられます。ヴィオラがその奏者にとって大きすぎると、弾きにくくなる事は容易に想像がつきます。また製作者の中でも、(長い歴史の中で様々なヴィオラのサイズがあった事をふまえて)「自分が大きいヴィオラを作るのは、ヴィオラらしい音を出すのに有利なのは大きなヴィオラだからだ。」「みんなが弾きやすい小さ目のヴィオラで、ヴィオラらしい音を出せる楽器を作るのが我々の使命である。」と、人によって見解が分かれています。

 このようにヴィオラのサイズが現代においても確定されないのには、歴史的な事情もあります。Antonio Stradivariの制作したヴァイオリンは、1700年代初頭までに355mmの大きさに落ち着きました(例外もある)。Stradivariは楽器を製作しながら、355mmより小さなヴァイオリンは音量が無く、355mmを超えてしまうと音色がアルトトーンに偏ってしまい、ヴァイオリンらしさが損なわれる事に気付いたのです。一方Stradivari制作のヴィオラ(8挺のみ現存)は、残された木型から470mm前後のテノールヴィオラと、410mm前後のコントラルトヴィオラの2種類を製作されていたことがわかっています。更に同時期に製作された他の職人の作品では、430mmを超える物もあれば380mm程度のヴィオラも存在します。大きさがまちまちなのは、20世紀初頭のヴィオラでも変わっていません。つまり、ベストな大きさを一つに決めるといった事が歴史上されなかったのです。そして、大きいから深い音が鳴る・小さいから演奏が容易である、と言ったそれぞれの大きさの利点が一番に着目されてきたことが推測されます。




ヴィオラの大きさの大まかな区分分け
(個人の主観が入っています)


本体サイズ 
355mmヴァイオリン
~ 380mmとても小さい
380mm ~ 390mm小さい
390mm ~ 400mm小さ目
400mm ~ 405mm標準的なサイズ
405mm ~ 410mm大き目
410mm ~ 420mm大きい
420mm ~とても大きい




 「ヴィオラはヴァイオリンより五度低い音が鳴る」という理由で、長さを1.5倍にすると53cm程度という事になります。しかしこんな大きいサイズの楽器は、演奏可能な人が限られてしまいます。しかし体積が1.5倍と考えた場合、長さは40.6cmで済みます。改めて、市販されている量産楽器のサイズ(39.4cm~40.6cm)と言うのは、大きすぎず小さすぎず、初心者を含む誰もが馴染みやすいサイズと言えるのではないでしょうか。もちろんヴィオラの音は、単に「大きなヴァイオリンの音」でもなければ「小さなチェロ」でもないのです。ヴィオラを愛好する人たちがそれぞれ想い描く「ヴィオラの音」というものがあります。

 自分は現在41.6cmの楽器を使用しておりますが、過去に39.5cm、40.5cmの楽器を所有していた事もありました。20歳を超えて初心者から弦楽器をはじめ、少しずつ上達する中で、その時々で感じた事などを紹介します。



初代 40.5cm
ドイツ量産品 2004年製作


 20歳頃に初心者で買った楽器で、価格も一般的な初心者・初級者向けでした。当初大学オケでトランペットを吹く傍ら、個人レッスンに通って基礎練習と曲を見てもらっていました。しかし2年3年練習するにつれて、「重たい」「音が固い」という不満点が見えてきました。ヴィオラを始めて4年目に初めてオーケストラに出る事になり、合奏のtuttiで弾くとやはり音が固い・・・個人レッスン当初は安価第一の弦を張っていましたが、音色への不満から次第に様々な弦を試すようになりました。




2代目 39.5cm
ハンガリー工房製 2010年製作


 初代を下取りして購入。堅い音の鳴る楽器から脱却したかったというのが買い替えの理由です。39.5cmという小ささからか、音はバイオリン寄りでしたが、オケのヴィオラセクションでよく馴染みました。2代目を購入する際、同じ工房製作のもので42.0cmのものと39.5cmのものがあったので、「きっと42.0cmの方が良いだろう」と弾き比べてみた所、39.5cmの方が遥かに良い楽器でした。42.0cmのものは音が固く、大きすぎて弾きにくい楽器でした。先入観を持つよりまず試奏すべきですね。




3代目 41.6cm
ポーランド工房製 2011年製作


 もともと新しい楽器を買う予定など全くありませんでした。所属している楽団の人がヴァイオリン講師として働いている音楽教室の楽器店で、弦楽器展示会を行うと聞き、興味本位で行ってみた所たまたま見つけました。展示会ではたくさんのヴァイオリンと共に、ヴィオラはテーブル1つに4挺だけ。価格も4者4様でした。一番高いヴィオラはサイズが41.6cmと書いてあり、お値段も高かったので自分には縁のない物だなあと感じましたが、「来たからには弾いてみるか」と思い、安いものから順に試奏してみました。3つ目までは「ふーん」という感想しか持たなかったのですが、4つ目を弾いてみて衝撃!持ってみて軽い。左手の指を開かなくても弾きやすい(39.5cmとそう変わらない)。音が豊穣で重厚で、好みの音色。暫く弾いて、値札を見返してその日は帰ったものの、楽器の事が気になって仕方ありません。これは、行動しなければ後悔すると思い、後日展示会のあった店に電話して、九州の展示会へ行ってしまっていた楽器をもう一度送り返してもらいました。売れてなくて良かった・・・そのまま2代目を下取りにして購入。



2代目ヴィオラ 39.5cm


3代目ヴィオラ 41.6cm
Tartis程ではないがロウアーバウツも大きい



やはり大きなヴィオラが良いのか?

 大きなヴィオラでも、自分の気に入る音が出なければ買う意味がありません。また弾きやすい事や作りが良い事も検討条件だと思います。左手のフィンガリングは大丈夫か、右手のボウイングは先弓まで無理が無いか、構えた時の体の負担がかからないか、等々を妥協し、無理をして大きな楽器を選んでしまうとかえってパフォーマンスが下がります。

 左手の持ちやすさですが、大きなヴィオラであってもネックの太さが工夫されていたり、弦長(ナットから駒までの、演奏の際に振動する部分の長さ)が工夫されていたりする事で、演奏する時の感覚はそれ程大きく感じません。作りの良い物についてですが、これは製作者サイドの見識になりますので、我々奏者が見分ける事は難しいと思います。よく「軽い楽器が良い」と言われますが、確かに軽い方が箱の内部の共鳴において有利です。しかし、楽器の板厚が薄すぎると駒にかかる弦の力に耐えられなくなり、数年で不健康な楽器の状態に陥る事も事実だ、とある製作者の方が言われていました。そして作りが良いという事の一つに、板厚は薄い(最低限の強度の厚みはある)が、表板が駒から受ける弦の力を上手く分散させる形状になっているか、という点を言及されていました。また、表板にねじりの力がかかった状態で組み上げられてない事も重要だそうです。この他にも製作する上で様々な要因があるのでしょうが、軽くても作りが良くなければ良い楽器とは言えないのは確かなようです。



ヴァイオリンとヴィオラ
ヴァイオリン:全長594mm
ボディサイズ355mm、弦長324mm
ヴィオラ:全長685mm
ボディサイズ416mm、弦長370mm



大きなヴィオラで困る事

 ケースを選ぶことにつきます。ボディサイズで2cm大きければ、全長で3cm程度長くなります。市販されているケースでは、無理やり押し込まないと入らないので楽器に負荷がかかる、そもそも入りきらない、という事がよくあります。店にあるケースを全種類出してもらい、入るかどうか試して見る、オーケストラの団員のケースで試して見る、等の実験が必要になります。自分の使っている楽器はボディサイズが大きい以外に、ターティスモデル程ではないのですがロウアーバウツが25.7cm(通常23.5~24cm)もあり、長さ的にはO.K.のケースでもお尻がつっかえて入らない、という事がわかりました。様々なケースを試した結果、現在はマックコーポレーションが出しているカーボンマックというケースを使用しています。


 
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