Marcinkiewicz
Claude Gordon model Trumpet
 
クラウド・ゴードン モデル

 Claude Gordonは、ビッグバンド、スタジオミュージシャンとして活躍した20世紀のトランペット奏者です。バンドディレクターとしても活躍し、Carl Fischerから教本も出版しています。彼は1936年から1945年まで、クラーク教本の著者Herbert L. Clarkからトランペットを学んでいました。その後はマジオ金管教本の著者Carlton MacBethにも学んでいます。ゴードンの愛用していたトランペットは、20世紀前半に製作されたF.BessonのMEHAでした。しかし、MEHAは時代と共に入手が不可能な楽器になっていきました。彼はLos Angels Benge ( Leisure Time Industries )やSelmer USAに話を持ち寄り、自身の理想とするトランペットとマウスピースを製作させています。

 クラウド・ゴードンモデルトランペットは1970年代にロサンゼルスベンジで作られ始めました。しかし、度重なる工場の合併、売却、再編が続き、1980年代にはセルマーUSAに生産が移ってしまいます。大きな工場で大量生産するセルマーUSAでは、CGモデルトランペットを生産するのに不向きでした。Bachとは異なるパーツを使用する点が、大規模な生産ラインで大量のBachトランペットを生産するセルマーにとって非効率だったのです。受注が少なかった事もあり、1990年代のBachのカタログには、CGモデルは既に載っていません。そして、2002年初頭にセルマーはCGモデルの生産を中止してしまいました。セルマーが生産したCGモデルは2000本程度と言われています。暫く生産停止状態が続いた後、2007年1月にオレゴン州のマーシンキウィッツで50本限定のLimited Edition製作を皮切りに、再びCGモデルトランペットの生産が再開されました。現在は月産1本程度のペースで製造が続けられています。




Claude Gordon ( 1916 - 1996 )
© Jeff purtle








マーシンキウィッツ

 Joe Marcinkiewiczはオレゴン州のCandyでトランペット・フリューゲルホルンとマウスピースを製作しています。ビッグバンドのトランペット奏者でもあり、高校在学中にプロ活動を始めた後、アメリカ西海岸のジャズで有名なStan Kenton楽団やDon Ellis楽団にも在籍していました。また教本で有名なCarmine Caruso、Roy Stevens、元シカゴ交響楽団奏者のRenold Schilke(シルキートランペット創業者)に師事した経歴があります。奏者として活動する傍ら、1965年から楽器修理をはじめ1983年に独立、現在オレゴン州で楽器とマウスピースを製作しています。トランペットの標準ラインナップには、クラシカルデザインのVermeer、B管の他にC管や4バルブにも対応したRembrandtの2種類が用意されています。そしてアーティストモデルにはRick Braun、Johnny Coppola、Claude Gordonのパーソナルモデルが存在します。



Marcinkiewicz Claude Gordon 470







CGモデルの特徴

 ビッグバンド等で活動するBachトランペットユーザーの中で好まれるセッティングの一つに、72ベルライトウェイト、43パイプ、MLボアと言うものがあります。ベルをライトウェイトにする事で、楽器が楽に演奏できるようになるというメリットがあります。当初ロサンゼルスベンジで製作していたCGモデルトランペットは、F.BessonのMEHAのマウスパイプにロサンゼルスベンジの6Xライトウェイトベル、管は0.468inchのボアでベル根本は1段階ボアを細く絞る、1番管の指掛けは無し、というものでした。

 CGモデルの他の楽器との大きな相違点は、「楽に鳴らす」というコンセプトでありながら、非常に大きなボアを採用している所にあります(ゴードンの理論では、空気の通る穴が大きい方がより抵抗が少なく楽に演奏できる)。通常のB管Bachトランペットでは、0.459inch ( 11.66mm )がMLボア・標準として採用されています。Lボアが標準のC管でも、0.462inch ( 11.73mm )です。CGモデルのトランペットはボア径が非常に大きく、マウスパイプのマウスピース側は 0.360inchですが、チューニングクルーク側ではロサンゼルスベンジで 0.468inch ( 11.89mm )、セルマーは 0.470inch ( 11.94mm )が採用されています。またベル側の根元で一旦 0.466inchに絞り直している事で独特の抵抗が生まれます。現在マーシンキウィッツでは468と470の2つのCGモデルトランペットが製作されていますが、468はロサンゼルスベンジの復刻、470はセルマーUSAの復刻になります。




上 : Marcinkiewicz Claude Gordon 470
下 : Vincent Bach 180ML GP
Claude Gordonには1番管の指かけが無い



Marcinkiewiczの方がチューニングクルークの幅が狭い







CGモデルマウスピース

 マーシンキウィッツが生産しているCGモデルのトランペットマウスピースは、CG 20、CG 22、CG 3の3種類です。20と22はスロートのドリル番号を表しており、#20 (4.09mm)と#22 (3.99mm)の2種類が選択できます。通常のBachマウスピースのスロートは#27 (3.65mm)という事を考えると、CGモデルはフリューゲルホルン並の非常に大きなスロートであることがわかります。CG 20とCG 22のリムサイズはBach 3より少し小さく、深いVカップ形状をしています。CG 3は#22のドリルにBach 5よりや小さいリム、そして3C程度の深さのVカップ形状をしています。

 CGモデルマウスピースは1970年代前半にロサンゼルスベンジが製造を開始しました。製造するにあたり、Herbert L. Clarkeの使用していたマウスピースをベースに設計したようです。また製造当初は、リムサイズによってカップの深さも様々だったようです。しかしこの時点でスロートは#20と決定されていました。1980年代後半になると、生産を委託されたセルマーが、ゴードンが設計したマウスピース、Bach 5V, 5MV, 5SVを生産しています。どのマウスピースもBach 5番リムのVカップですが、5V、5MV、5SMの順に浅くなり、スロートは5Vが#20、5MVと5SVは#25 ( 3.81mm )となっています。




左 : Marcinkiewicz E12.4 Roger Ingram
中 : Marcinkiewicz CG 20
右 : Vincent Bach



E12.4 Roger IngramとCG 20のカップ
共にハイトーン目的のマウスピースだが、方向性が異なる
E12.4はBach 12位の口径で大変浅く、スロートは#28 (3.56mm)
CG 20は深いVカップでスロートは#20 (4.09mm)








ベルの彫刻


レシーバにCLAUDE GORDONの彫刻がある


2番バルブ裏


ベルの彫刻にもClaude Gordonの名が彫刻してある


Candy Oregonは工房の地


ピストンはボタン裏にゴムがある古いタイプ


ボトムキャップの形状


チューニング管の支柱


ウォーターキィの裏にMの打刻がある


3番管ストッパーのネジ


2番バルブ表側にはボア径が打ってある


管のつなぎ目は独特


2番管のニップル


3番管のMARCINKIEWICZの彫刻


天使の彫刻










 
Назад
Zurück