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大きなフリューゲルホルンに見えてきませんか? |
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とも思うのです。 マーチングでのみ使用される金管楽器には、珍しくて特徴的なものが多数あります。しかし、マーチングをしている人がそもそも少ないので、これらの楽器はほとんど知られていません。また多くのマーチング団体は中学高校の吹奏楽部で組織されているため、楽器は学校備品として存在しているものが多いです。高校生までに楽器を見収めてしまい、大人になると朧げな記憶しか残っていないという事は珍しくありません。 マーチングで使う楽器のうち、ホルン奏者が使用するものとして「マーチングメロフォン」と「マーチングホルン」があります。管の長さはそれぞれ、マーチングメロフォンはトランペットとトロンボーンの間の長さのF管(トリプルホルンのHigh F管)、マーチングホルンはB管でフレンチホルンのB管と同じ長さ(トロンボーンと同じ)となっています。マーチングメロフォンの方が若干軽い音色で、操作も楽に行えますが、音程が良い個体・良くない個体が存在します。マーチングホルンはよりフレンチホルンに近い音色で、フロントベルのピストン式B管シングルホルンと考えて良いでしょう。B管なので指が分かり易いといったメリットがあります。そして、両楽器ともフレンチホルンと異なり右手で操作しなければなりません。 ベル口径はマーチングメロフォンの方が1cm程大きく、267mm前後です。マーチングホルンは257mm前後となっており、Alexander社の標準的なフレンチホルンのベル口径である310mmよりは両楽器とも小さい設計となっています。またマーチングメロフォンの方がベル根元が細く、終盤でベルが急激に広がるデザインとなっており、管も短い事もあってより細く明るい音色となります。ボアサイズはそれぞれマーチングメロフォンが11.7mm、マーチングホルンが12mmです。マーチングメロフォンはトランペットのMLボアとLボアの間くらい、マーチングホルンはフレンチホルンとほぼ同等とみてよさそうです。こうしてみると、マーチングホルンはベル形状やボアサイズでホルンとよく似ているため「ベルの小さいフロントベルのB管シングルホルン」と言って差し支えなさそうです。一方でマーチングメロフォンは、フレンチホルンともフリューゲルホルンとも違う独自のベル形状とボアを持ったF管の楽器と言うことができます。 |
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マウスピースの口径がトランペットに近いので、トランペット奏者がマーチングメロフォンやマーチングホルンを演奏することも可能です。これらの楽器は形状的に「大きなフリューゲルホルン」のようにも見えます。特に、Courtoisから出ているSergei Nakariakov用の大きなベルのフリューゲルホルンは、普通のフリューゲルホルンとマーチングメロフォンの中間のようなフォルムに見えます。トランペット奏者のAndrea Giuffrediはトランペットと共にマーチングメロフォンも用いてレコーディングを行っています。 YouTube : Caffè Italiano / Andrea Giuffredi よくオーケストラのホルン奏者が「トランペットの人がホルン吹くと、息が強すぎてオケのホルンの音にならない。その音色じゃブラームス2番やチャイコフスキー5番のSoloは吹けない。」と言われます。勿論そうなのですが、オーケストラのホルン奏者の音を目的とするものではなく、珍しい楽器の演奏を楽しむという事を第一としたものと解釈ください。 ※ 2 サクソルン属という観点では、フリューゲルホルンより低音の同族楽器はEs管アルトホルンやB管バリトンという事になるでしょう。しかしここでは単純に形状が似ているという事を第一とします。 マーチングメロフォンのマウスピースは、トランペットよりややリム口径が大きく、Vカップの内部形状をしています。Bach 1CやSchilke 24よりはるかに大きく、アルトホルンのようなリムの感覚を奏者に与えます。また、トランペットやホルン用のマウスピースを使用できるアダプターも存在するため、使用するマウスピースによって音色を意図的に変えることも可能です。基礎練習の範囲では、ゆっくりとした息で低音域のロングトーンや、F管長管トランペットのフレーズを体感する事に役立ちます。また楽器と指に慣れてきたら、フリューゲルホルンやトランペットのレパートリーを1オクターブ下げて演奏してみましょう。早いフレーズも演奏できるようになれば、Soloや金管アンサンブルで活用可能となるでしょう。 マーチングホルンはホルンのマウスピースを使用します。リム口径はトランペットと似ていますが、薄いリムのVカップなのでコントロールするには慣れが必要です。ゆったりした息で吹くことで、ホルンのように豊かで柔らかい音色を出すことができます。トランペットとフリューゲルホルンの息の使い方の違いをより差別化した、とも言えます。B管であることから、フリューゲルホルンを1オクターブ低くした楽器としてとらえるのに容易で、指の問題はほぼ発生しないと考えて良いでしょう。管長さが2倍になる事から、音のイントネーションや発音、音を正確に当てることがより難しくなります。これらはナチュラルトランペットを演奏するのと同様で、現代トランペットを演奏する時より難しくなる分、現代トランペットの表現の幅を広げる事にもつながります。 |
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